Q.「SM」オイルは環境型のエンジンオイル


環境問題に対応するために生まれた新しい規格が「SM」。大きく変わったポイントは、

 1.排気ガス中に含まれる二酸化炭素を「SL」オイルより軽減する
 2.「SL」よりもフリクションロスを減らし、省燃費性を向上する
 3.触媒に影響する添加剤を減らして、触媒性能維持を保つ
 4.長期にわたって基準以上のオイル性能を維持する
 5.オイルの蒸発性を抑えるように強化されている

ガソリンエンジンオイルの場合、これまでは「SL」が最高グレードだったのが、新たに「SM」という規格が加わり、これが最高グレードとなった。
以外にも知られていないが、ILSAC規格(日米の自動車工業会で組織された潤滑油国際基準化および認定委員会によって定められた規格)が2003年(平成15年)7月31日に、新たに「GF-4」を設けたことによって、API規格も同年11月30日から新たに「SM」規格を設定した。そのためガソリンエンジンオイルにおいては、それまで「SL」が最高グレードだったのが、今日では「SM」オイルが最高グレードになったのである。
ではなぜ、このような新しいオイルの規格が見直されたのか?一番の理由は、ここ最近問題になっている環境問題。とりわけ2000年(平成12年)に京都議定書に基づいてなされた対応。二酸化炭素による生態系の変化、ハイドロカーボン(炭化水素)やノックス(窒素酸化化合物)などの有毒ガスの排出による大気汚染や光化学スモッグの抑制など、現在地球環境は危機的な状態にある。
こうした問題をできるだけ軽減するため、エンジンオイルに含まれるオイルリンや硫黄分の含有量を減らして有害な排出ガスを出さないように、触媒装置に負担をかけないようにして」長持ちさせる。クルマのエンジン機構に発生するフリクションロスを新しい規格のオイルを使って減らし、できるだけエンジンをスムーズに回すことにより低燃費を実現。更にはいままでより酸化安定性を高めてエンジンオイルの交換サイクルを延ばすことにより、排出オイルを低減する。この3点がオイル規格のなかに組み込まれて、新たな審査基準数値が設定されて、新しい規格である「SM」が誕生したわけである。いうなれば、「SM」オイルは環境型オイルなのだ。
今まではAPI規格のレベルが高ければ高いほど良いオイルであると判断されていたところがあった。だが「SM」規格が誕生してからは、多くの団体やオイルメーカーが独自の基準でオイルの善し悪しを判断するようになってきた。つまりオイル技術者の間でも、環境にとっては優れたエンジンオイルにとって好ましいかどうかわからないというのが、意見として多くあるからだ。
また「SM」オイルはフリクションロスを軽減しているため、低粘度で浸透性の高いオイルなので、オイルの油膜でクリアランスなどを調整している古いクルマに「SM」オイル入れたとしても、低排出ガス効果や省燃費どころか、トラブルの原因になりかねないので注意。



Q.「SJ」「SL」「SM」とは?

エンジンオイルの性能は、グレード(格付け)によって分類されている。つまりグレードが高ければ高いほど、性能の高いエンジンオイルであると、一般に評価されている。こうしたエンジンオイルの格付けといわれるAPI品質表示規格は、API(アメリカ石油協会)とSAE(アメリカ自動車技術者協会)、ASTM(アメリカ材料試験協会)3団体が協力してつくった格付けであり、現在オイルのグレードを表す共通言語(ユーザーランゲージ)とされている。

ガソリンエンジン用のエンジンオイルの場合は「SA」からスタートし、「SB」「SC」「SD」・・・と順にランキングされ、末尾のアルファベットが後になればなるほど、高い基準をクリアしたオイルとして評価される。とはいっても、現在カー用品店などで売られているエンジンオイルのグレードは「SJ」「SL」「SM」の3種類。ただし「SH」というグレードは1997年に廃止され、「SI」グレードのガソリン用エンジンオイルはない。
ちなみにディーゼルエンジン用のエンジンオイルの場合には「CA」からはじまり「CB」「CC」「CD」「CE」「CF」と、ガソリン用オイルと同様、「C」の次にくるアルファベットが後列になればなるほど、品質が高くて高性能なオイルをなる。ACEA規格の運用が始まったのは1996年1月から。そのため聞き慣れない人も多い。

ちなみにACEA規格は欧州自動車工業会(ACEA/Association Des Constructeurs Europeens d'Automobiles)という、ヨーロッパのすべての自動車メーカーとGM、フォード、石油メーカーと消費者の代表により組織された協会で定められた規格。グレード分類はAシーケンスをガソリンエンジン用。Bシーケンスは乗用車などの軽負荷ディーゼルエンジン用、大型トラックなどの高負荷ディーゼルエンジンはEシーケンスと区分され、5段階で格付けされる。オイルメーカーによって「A3-02」や「B3-98」、「E4-99」というように、規格表記の後にハイフンと2桁の数字が入っている場合があるが、これはその規格の制定年度を表しているものである。
エンジンに適したオイルをユーザーに選んでもらうため、1947年(昭和22年)にAPI(アメリカ石油協会)が「レギュラー」「プレミアム」「ヘビーデューティ」と3つに分類したのだ最初。
その後、エンジンオイルに対するユーザーの要望が高まり、1955年(昭和30年)にガソリンエンジン用として「ML(ライト)」「MM(ミディアム)」「MS(シビア)」と、ディーゼルエンジン用として「DG(ジェネラル)」「DM(ミディアム)」「DS(シビア)」との合計6種類のグレードに分類された。そして、API(アメリカ石油協会)が、エンジンオイルを具体的にということで、1970年(昭和45年)にAPI規格の原点であるものが誕生した。