Q.API SP/ILSAC GF-6


2020年5月に、エンジンオイルの国際規格APIとILSACに新しいグレードが誕生した。エンジンの進化に合わせて、要求される性能を満たすために制定されるこの規格、新グレードではどのような内容でしょうか?

ILSAC 「GF-6」規格の主な変更点

 ★LSPI防止性能
 ★タイミングチェーン摩耗防止性能
 ↑省燃費性能
 ↑耐スラッジ性能
 ↑ピストン清浄性能
 ↑参加安定性能
  ★:新規格 ↑:性能向上

APIはアメリカ石油協会が定めたエンジンオイルの規格で、ILSACは日米の自動車工業会が定めた規格。ただし、ILSAC規格はAPI規格に省燃費性能を加えたもので、かなり密接な関係があり、別モノというわけではない。
というわけで、API/ILSACはアメリカ系のオイル規格であり、このほかにヨーロッパではACEAという規格があるなど、API/ILSACは絶対的な規格ではない。すべてのオイルがこの検査を受けるわけではないし、これに適合しなければ粗悪品だということもまったくない。
ただし、API/ILSACは、通常3~6年に1回程度更新され、その時代ごとにエンジンオイルに要求される性能に合わせて内容は厳しくなっていく。この最新規格に適合しているという事は、十分信頼に足るエンジンオイルだと考えていい。
今回、API規格では「SP」、ILSAC規格は「GF-6」というグレードが同時に登場した。GF-6はGF-5と比べて、省燃費性能、耐スラッジ性能、ピストン洗浄性能、酸化安定性能など、幅広い項目で基準が厳しくなり、性能が向上している。
そして、GF-5の時にはなかった新しい項目がGF-6にはふたつ加わった。ひとつは、LSPI防止性能。LSPIとは、最近増えてきた直噴ターボエンジンで起こりやすい騎乗燃焼のことだ。この異常燃焼はエンジンの破損や劣化の原因になるため、エンジンオイルにその防止性能が追加された。
もうひとつの新規項目はタイミングチェーンの摩耗防止性能だ。最近のクルマはタイミングベルトが減ってタイミングチェーンが増えてきたこともあって追加された項目。
ところで、従来のグレードであるGF-5が登場したのは2010年。API SNの登場と同時だった。今回の新グレードGF-6はそこから10年ぶりの登場で、これは異例の長さだ。
実は、GF-6においてはエンジン試験法が変わるという大きな変革があったが、それがうまくいかず、もともとの予定よりも実施が延期になっていたのだ。しかし、その間にもLSPIのトラブルは増えていたので、LSPI性能を先行で付加した「API SN PLUS」というグレードを2018年に施行していた。
そこで「API SN/ILSAC GF-5」登場(2010年)→「API SN PLUS」登場(2018年)→「API SP/ILSAC GF-6」登場(2020年)という変則的な流れになった。それだけに、GF-5とGF-6の間には、大きな進歩がある。
モービル1や76などAPI SN PLUSに適合させていたオイルはGF-5でもLSPI防止性能を持っていたが、ILSAC規格でいえばGF-6でLSPI防止性能が初採用されたことになる。特に直噴ターボのクルマに乗っているオーナーも多いだろうが、GF-6では省燃費性能、洗浄性能なども向上しているので、基本的にどのクルマにもメリットがある。
もっとも、冒頭にも書いたとおり、オイルの性能はAPI規格、ILSAC規格がすべてではない。各社独自の添加剤を配合するなどさまざまな工夫をしてエンジンを保護し、性能を引き出そうとしている。一定期間で交換してしまうものだからこそ、いろいろなオイルを試してみるのも楽しいではないだろうか。



GF-6にはAとBがある

GF-6には細かく分けるとGF-6AとGF-6Bがある。GF-6に適合したオイルのうち、0W-16は低粘度に省燃費オイルとしてGF-6Bに分類されるのだ。それより固いものはGF-6Aとなる。実際は粘度の違いだけなので、AやBをつけずに「GF-6」と表記されることも多いと思われるが、AとBではマークが異なる。GF-6Bは盾の形をした新しいマークになるのだ。GF-6AはILSAC認証マークであるスターバーストマークと呼ばれるトゲトゲのついた円形のマークが引き続き使われる。