バランサーシャフト


エンジンの2次振動はぽピストンが往復運動を1回する度に2度起きる。そこで2本のバランサーをクランクシャフトの2倍の速さで互いに逆回転させることで、この2次振動を打ち消すというのがバランサーシャフトの基本原理である。直列4気筒エンジンが8気筒並みの静粛性が得られるというメカニズムであるが、静かになるが重くもなるというアンビバレンツな存在である。バランサーシャフトは大きく分けて次の「エンジンブロック組み込みタイプ」と「別体式(カセットタイプ)」の2つである。

エンジンブロック組み込みタイプ
 › MITSUBISHIのサイレントシャフト
 › TOYOTA HIACE_3RZ-FE(4気筒・2700cc)

別体式(カセットタイプ)
 › HONDA 初期型インスパイア(5気筒)のバランサーシャフト
 › HONDA ODYSSEY_K24A
 › HONDA エデックス_K20A
 › NISSAN プリメーラ_QR20DD・QR20DE
 › MAZDA アテンザ・アクセラ_L3-VE(2300cc)

このバランサーシャフトのメカニカル的な困難さは、クランクシャフトの2倍の速度で回転する部品である。軸受は1本のバランサーシャフトに付き前後2つあり、面圧を小さくするためにエンジンのメタルに比べ20~30%幅広である。バランサー単体で見るとバランスウエイトが片寄って付けられており、しかもクランクシフトの2倍回る。
バランサーシャフトだけでいえばアンバランスなのである。部品点数も多くなりコストも上がる。エンジンビルダー&エンジンリビルダーの中には、「バランサーシャフトをつけるよりもクランクシャフトのダイナミックバランスやピストン&コンロッドの重量バランスを詰める方がイイのではないか」という意見もある。バランサーシャフトなしのエンジンが必ずしもダメなエンジンでないことを思えばこの見解にも一理ある。それにバランサーシャフト単体の重量は3kg程もあり、エンジンの軽量化には逆方向である。そのため最近ではバランサーシャフトの装着は直列4気筒で排気量の大きいものだけに限られている。
この世界のパイオニアである三菱ではこの潤滑に苦労したとみえ当初はバランサーシャフトうぃ中空にして中にオイル通す手法を採用していたが、おそらく高回転での潤滑不足傾向に気が付き、途中からシリンダーブロックのオイルラインを活用した構造に変更している。なお、三菱のバランサーシャフトはエンジンを前から見るとクランクシャフトをオフセットされている独特のもので、このレイアウトで2次振動の上下動だけではなくエンジンのローリング振動を小さくするとされる。
バランサーシャフトに使用されているメタルは、シリンダーブロック組み込みタイプはブッシュタイプだが、別体式(カセットタイプ)のバランサーシャフト・ユニットの場合は上下2分割できるスタイルなのでメタルも上下2分割式。
メタルはオーバーホール時に交換で済む場合なら問題ないが、メタル自体が時として共回りすると、ハウジングを機械加工してオーバーサイズのメタルを打ち込む。日本では需要がないので入手できないが、アメリカなどではアフターマーケットでこうした部品が手に入るし、ごく当たり前のようにオーバーホールやリビルトが行われている。


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