フロンガスという名称は日本だけで通用するものです。つまりフロンは「塩化フッ化炭素(クロロフルオロ・カーボン)」の日本における名称なのです。フロンはメタンやエタンなどの水素原子(H)の一部または全部を、フッ素(F)や塩素(Cl)などのハロゲン元素に置き換えたものです。その組み合わせにより、いろいろな種類のフロンが作られている。正確には「CFC」、「HCFC」、「HFC」の3種類に別れる。オゾン層を破壊する程度がひどく問題になっているのはこのなかの「CFC」である。ちなみにフレオン(ガス)という名称は、アメリカのデュポン社が使っていた商品名であり、「F-12」というように表示していました。日本のフロンの名称はダイキン工業(株)の商品名であったダイフロンから流用されたものです。それまでは例えば「R-12」を、その学名であるジクロルジフルオルメタンと呼んでいました。しかし日常の使用には適さないので、「フロン12」と呼ぶように変更されてきたわけです。「R-12」、「R-22」などと示されている「R」は、冷媒、冷却剤(Refrigerant)としての世界に共通する呼び名です。
フロンには「CFC」、「HCFC」、「HFC」などの表示がされます。フロンは炭素(C)、水素(H)の化合物です。メタン(CH4)やエタン(C2H6)などの水素原子の一部または全部をフッ素(F)や塩素(Cl)などのハロゲン元素に置き換えたものです。この組み合わせにより、現在は20種類以上のいろいろなフロンが作り出されています。つまりフロンは「塩化フッ化炭素」なのです。この塩化フッ化炭素を英語にすると、クロロフルオロ・カーボン(Chloro
Flioro Carbon=CFC)となります。この「CFC」は完全にハロゲン化されたクロロフルオロ・カーボンで、オゾン層を破壊する塩素を含む化合物で「CFC-11」、「-12」、「-113」、「-114」、「-115」などの種類があります。
「HCFC(Hydro Chloro Fluoro Carbon)は水素元素を含んだクロロフルオロ・カーボンで、塩素を含んでいますが水素がありますので、オゾン層破壊の可能性は低いとされる化合物で「HCFC-123」、「-142b」などがあります。
「HFC(Hydro Fluoro Carbon)」は水素元素を含んだクロロフルオロ・カーボンで、オゾン層を破壊しないとなれる化合物で「HFC-134a」、「-152a」などがあります。
現在オゾン層の破壊が問題になり、規制が加えられていうのは、「CFC」であり、特定フロンなどと呼ばれています。従来のカーエアコンの冷媒に用いられてきたのはこれであり、現在「HFC」への移行が進められているわけです。これらを従来の冷媒フロンに代わるフロンということで、「代替フロン」とか「新冷媒」などと呼んでいます。
記号の後ろの数字はフロンの種類(組織)を表す世界共通の数字です。数字の百に位は炭素原子(C)の数-1を示しています。十の位は水素原子(H)の数+1を表しています。一の位はフッ素原子(F)の数を表しています。例えば「CFC-113」は炭素原子2個、水素原子0個、フッ素原子3個で構成されたフロンであることを表しています。従って3桁の数字がくっついているフロンはエタン系、2桁の場合はメタン系ということになります。
数字の後の「a」、「b」、「c」…と小文字のアルファベットが添字されているものもあります。この小文字は各炭素にくっついている原子の重さの合計を比べての、分子の対称性の差を示しています。そして対称性の高いものから「添字なし」、「a」、「b」、「c」…と順に付けられています。この数字を見ればどこのメーカーのものでもその組織がわかるわけです。
フロンに関する規制は、世界共通となっています。規制の対象になっている特定フロンは、「フロン11」、「フロン12」、「フロン113」、「フロン114」、「フロン115」に5種類。それに「フロン13」、「フロン111」、「フロン112」、「フロン211」、「フロン212」、「フロン213」、「フロン214」、「フロン215」、「特定ハロン」、「四塩化炭素」、「トリクロロエタン」の規制もされています。カーエアコンで問題になっている「フロン12」は、年間消費量/年間生産量ともに、1995年には1996年実績の50%以下に、1997年には15%以下に、そして2000年には全廃するということが決定されています。しかしこの2000年までに全廃する予定でした「特定フロン(R-12など)」の消滅スケジュールは、国連環境計画などの調査で予想以上にオゾン層の破壊が進行していることから、日本ではこの計画を早めて1995年末全廃が決定しました。また「HCFC」は2030年に廃止となりました。これを受けてカーエアコンの冷媒を「フロン12」の代替品に代える対応が、世界のカーメーカーで取られ始めています。もっともその動きが素早いメーカーもあれば、徐々にというメーカーもあります。また昨今問題になっている補修用フロンの品不足もこれに端を発しています。
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HFC-134a
1,1,1,2-テトラフルオロエタン |
CFC-12
ジクロロジフルオロメタン |
化学式 |
CH2FCF3 |
CCl2F2 |
分子量 |
102.03 |
120.91 |
沸点(℃) |
-26.2 |
-29.79 |
凝固点(℃) |
-101 |
-158 |
臨界温度(℃) |
101.15 |
112.0 |
臨界圧力(kgf/cm2) |
41.452 |
42.1 |
オゾン破壊係数(ODP) |
0 |
1.0 |
地球温暖化係数(GWP) |
0.24~0.29 |
2.8~3.4 |
カーエアコンの完璧な冷媒だとして用いられてきた「フロン12」に代わる代換フロンとして選ばれたのは「フロン134a(HFC-134a)」です。この「フロン134a」はオゾン層破壊係数(ODP:Ozone
Depletion Potential)は「0」とされています。ちなみに「フロン12」は「1.0」です。オゾン破壊係数とは「フロン11」のそれを「1.0」として求めたオゾン破壊力の推定値です。
従来のカーエアコンシステムに代替フロンを用いた場合の問題点は、従来のコンプレッサー潤滑オイルは「フロン134a」にはほとんど溶けません。従ってコンプレッサーからサイクル内に吐き出されたオイルは、サイクル内を循環してコンプレッサーには戻ってこなくなります。つまりコンプレッサーの寿命は低下し、ひどい場合は焼き付くことも考えられます。
次に「フロン134a」はゴムホースやシール材に溶解しやすく、冷媒の漏れ量が多くなります。またリキッドタンク内に封入されているシリカゲル乾燥剤は、「フロン134a」も吸着するので、本来の役目である吸水性能が低下します。さらに圧力は「フロン12」に比べて高くなる傾向があります。新冷媒対応型エアコンははその冷凍サイクルの構成は従来と代わるものではありませんが、まずはコンプレッサーオイルが鉱物油から合成油に変更されています。DENSOの製品で例にあげると、「ND-OIL8」(従来は「ND-OIL6」)というポリアルキレングリコール(PAG)のオイルが採用されています。
次にコンプレッサーや配管のつなぎ部分に用いられるシール・ゴムに材質と太さなどが変更されています。最近「フロン12」と「フロン134a」に共通できる新型のシールがあります。またホースは新たに内面にナイロン樹脂層を追加した専用タイプとなっています。乾燥剤も新しい材料に変更されています。
「フロン134a」の新しいコンプレッサーオイルは吸湿性が高いため、使用後は容器などの封を速やかに行うこと。必要があって冷凍サイクルの配管を取り外したような場合にも、サイクル(配管)内部が空気に触れないよう、速やかに遮断の処理をしておかなければなりません。
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