貨物車(乗合車)から乗用車への変更に要求される法律の要件
1. 貨物車(乗合車)から乗用車への変更登録する場合は、構造要件(改造自動車の取扱いでなく構造変更登録)でなく審査事務規程において、乗用車の定員保護の観点から乗用車の安全基準を満たさなければならない。つまり材質等の強度検討書における計算書及び装備要件確認での有無で、適合の判断基準ができない技術基準にて定められた内容の試験データの提示にて適合の有無が審査されます。
2. 乗用車の安全基準は、技術基準にて定められた内容の試験データを提示して、安全の信憑性を立証しなければならない。制動装置の技術基準は、貨物車(乗合車)と乗用車(特種車両は元ベースの基準)の2つに分類されます。貨物車(乗合車)から乗車定員9人以下の乗用車(車両カテゴリー:M1)への変更する場合は、必ず制動装置の試験(平成16年から乗用車両はABS装着が義務化され電磁両立性試験も必ず必要)を実施してデータ提出しなければなりません。
また、ハイエースの10人乗りワゴンは、制動装置の基準が(乗車定員10名以上は除く)ワゴンでありながら貨物車(乗合車)の制動装置で認可取得されております。(車両カテゴリー:M2)
3. 乗用自動車の安全基準の内容
①「保安基準第31条」排ガス測定の技術基準
②「保安基準第11条第2項」衝撃吸収式かじ取装置の技術基準
③「保安基準第11条の2第2項関係」施錠装置の技術基準
④「保安基準第12条第2項関係」乗用車の制動装置の技術基準
⑤アンチロックブレーキシステムの技術基準
⑥「保安基準第15条関係」衝突時における燃料漏れ防止の技術基準
⑦「保安基準第18条第2項関係」前面衝突の乗員保護の技術基準
⑧「保安基準第18条第3項関係」側面衝突時の乗員保護の技術基準
⑨「保安基準第20条第4項関係」内装材料の難燃性の技術基準
⑩「保安基準第20条第5項関係」インストルメントパネルの衝撃吸収の技術基準
⑪「保安基準第20条第6項関係」座席及び座席取付装置の技術基準
⑫「保安基準第22条第7項関係」シートバック後面の衝撃吸収の技術基準
⑬「保安基準第22条第4項関係」頭部後傾抑止装置の技術基準
⑭「保安基準第22条の3第2項関係」座席ベルト取付装置の技術基準
⑮「保安基準第22条の3第4項関係」運転者席の座席ベルトの非装着時警報装置の技術基準
⑯「保安基準第18条第1項第3号関係」外装の技術基準等
4. 上記の技術基準にて定められた内容の技術基準立証試験を行い、自動車検査独立行政法人へ試験データを提示して立証しなければならない。
5. 貨物車(乗合車)から乗用車への変更の場合は、改造自動車の取扱いとならず、構造変更の要件となり、事前審査で申請する強度検討書等の立証は適応されません。
※上記は平成29年7月に作成したものです。
■国連・欧州統一法規であるECE規則や、EUにおけるEC指令のなかで定義づけられている車両カテゴリー
貨物自動車 |
GVWR ≦ 3.5t
N1 |
3.5t < GVWR ≦ 12t
N2 |
12t > GVWR
N3 |
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乗用自動車 |
乗車定員 ≦ 9人
M1
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10人 ≦ 乗車定員
GVWR ≦ 5t
M2 |
10人 ≦ 乗車定員
5t < GVWR
M3 |
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被牽引自動車 |
GVWR ≦ 0.75t
O1 |
0.75t < GVWR ≦ 3.5t
O2 |
3.5t < GVWR ≦10t
O3 |
10t < GVWR
O4 |
※GVW:車両総重量(Gross Vehicle Weight)
※GVWR:技術的最大許容質量 ( Technically Permissible Maximum Laden Mass )
※アルファード(7~8人乗り)などはM1
※ハイエースワゴン、コミューターはM2。乗車定員を9人以下にする場合は、M1の基準になっている事。それを証明する書面が必要になります。
制動装置技術基準適合試験(ブレーキの性能試験)費用:¥1,500,000~(税別)、試験には3ヶ月~6か月必要です。
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貨物自動車を乗用自動車に用途変更する場合の項目(平成29年7月現在)
例:ハイエースバン スーパーGL・貨物車→乗用車へ変更(型式:CBF-TRH216K・初年度登録:平成29年10月) 結果:キャンセル
項 目 |
内 容 |
操縦装置 |
平成29年2月1日~乗車定員10人以下・車両総重量5トン以下の乗用車は新基準が適用される。
(一部*3を除いた新基準は平成29年6月15日~。車両総重量12トン以下の貨物車を含む)
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制動装置 |
乗車定員10人未満の乗用車には平成26年10月1日~制動装置にABS*4、VSC*5及びBAS*6が必要。
乗車定員10人以上、車両総重量5トン以下の乗用車には平成29年2月1日~制動装置にABS、VSCが必要。
(車両総重量5トン以下の貨物車のVSC装着義務は平成33年11月1日~)
衝突被害軽減制動制御装置(アイサイトなど)
乗車定員10人以上の乗用車は平成33年11月1日~装着義務(車両総重量3.5トン以下に貨物は装着義務なし) |
かじ取装置 |
衝撃吸収性(コラプシブルステアリング)
乗車定員10人以下の乗用車および車両総重量1.5トン未満の貨物車は衝突等による衝撃を受けた場合、運転者に過度の障害を与える恐れの少ない構造でなければならない。次の自動車には適用しない。
①~平成21年8月31日の乗車定員10人以下の乗用車であって、かじ取ハンドル軸が水平から35°を超える構造のかじ取装置を備えたもの。
②~平成21年8月31日の乗車定員10人以下の乗用車であって、平成19年9月1日~型式指定自動車。
ただし、平成19年8月31日以前の型式指定自動車とかじ取装置における運転者の保護に係る性能が同一であるもの、
および、かじ取装置に係る改造を行ったものを除く。
③次に掲げる貨物車
・~平成23年3月31日に製作されたもの
・平成23年4月1日~平成28年3月31日に製作されたもの(平成23年4月1日~型式指定自動車を除く)
・平成23年4月1日~平成28年3月31日の型式指定自動車
・平成23年3月31日以前の型式指定自動車とかじ取装置における運転者の保護に係る性能が同一であるもの、
および、かじ取装置に係る改造を行ったものに限る。
破壊試験(乗用車と共通部品ならそれを証明するもの)。次のいずれかに掲げるものは基準に適合するものとする。
①運転席の座席最前縁*1から車両前端までが750mm以上ある場合
(破壊試験を行っていない旨が車検証の備考欄に記載される)
ハンドルの表面のうち、運転者側に面してφ165mmに球が接触できる部分に曲率半径2.5mm未満の凹凸や
鋭い突起を有してないこと。
②UN R94に適合するかじ取装置。
③FMVSS 203もしくは208に適合するかじ取装置。 |
施錠装置 |
乗用車及び貨物車の原動機、動力伝達装置、走行装置、変速装置、かじ取装置または制動装置には施錠装置を備え付けなければならない。
(乗車定員11人以上の乗用車、車両総重量3.5トンを超える貨物車および被牽引車は除く)
施錠装置は次の基準に適合するものでなければならない。
①次に掲げる施錠装置の区分に応じた構造であること。
・制動装置以外に備える施錠装置:その作動により、施錠装置を備えた装置の機能を確実に停止させることができる構造
・制動装置に備える施錠装置:その作動により、自動車の車輪を確実に停止させることができる構造
②堅ろうであり、かつ、容易にその機能が損なわれ、または作動を解除されることがない構造であること。
③その作動中は、始動装置を操作することができないものであること。
④走行中の振動、衝撃等により作動する恐れのないものであること。
※施錠装置の具体的な構造等については細目告示別添7「四輪自動車等の施錠装置の技術基準」を参照
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燃料タンク |
プラスチック製の場合は破壊試験(鉄製の場合は問題なし) |
燃料装置の燃料漏れ防止性能 |
破壊試験。次に掲げるものであれば、保安基準に適合するものとする。
①燃料タンクおよび配管の最前部から車両前端までが420mm以上あり、
燃料タンクおよび配管の最後端部までが65mm以上ある場合。
②燃料タンクおよび配管(ホイールベース間に備えられたものを除く)が、
動車の下面を除き、車外に露出していないもの。
③燃料タンクおよび配管の付近に、衝突時等において損傷を与えなる恐れのある鋭利な突起物がないもの。
(破壊試験を行っていない旨が車検証の備考欄に記載される) |
前突 |
破壊試験(フルラップ前面衝突時およびオフセット衝突時の乗員保護性能)
ただし、運転席の座席最前縁*1から車両前端までが750mm以上ある場合は保安基準に適合するものとする。
(破壊試験を行っていない旨が車検証の備考欄に記載される) |
側突 |
破壊試験(平成30年~ポールとの側面衝突時の乗員保護性能が必要)
ただし、運転席の座席最側端*1,2から車両の最外側までが130mm以上ある場合は保安基準に適合するものとする。
(破壊試験を行っていない旨が車検証の備考欄に記載される) |
インパネ |
乗用車基準(乗用車と共通部品ならそれを証明するもの) |
座席取付装置 |
平成24年7月22日~乗車定員10人未満の乗用車は横向きは不可
(車両総重量3.5トン以下の貨物車は平成28年7月22日~) |
座席の間げき |
乗車定員11人以上は200mm必要。 |
頭部後傾抑止装置 |
乗車定員10人以下の乗用車は必要。平成24年7月1日~乗車定員11人以上、車両総重量3.5トン以下の乗用車は必要。
乗車定員11人以上、車両総重量3.5トン超える乗用車は不要。 |
座席ベルト取付装置 |
平成24年7月1日~乗車定員10人未満の乗用車(普通、小型、軽自動車)、乗車定員10人以上・車両総重量3.5t以下の乗用車、高速道路等を運行する乗車定員10人以上のバスには、運転席を含む前向きの座席全てに、ELR3点式の座席ベルトが必要。
乗用車の横向き座席は平成24年7月22日~座席ベルトが必要。(貨物は平成28年7月22日~) |
座席ベルト非装着時警報装置 |
平成6年4月1日~乗車定員10人未満の普通乗用、小型、軽自動車には必要。(輸入車は平成7年4月1日~)
乗車定員10人以上、普通貨物(1ナンバー)は必要ない。
※令和2年9月1日以降は、乗車定員10人未満の乗用車と車両総重量3.5t以下の貨物車には全席リマインダーが必要。乗車定員10人以上と車両総重量3.5t以上の貨物車は前列席(運転席+助手席)に必要。ただし令和2年9月1日以降の生産車でも継続生産車は除く。 |
年少者用補助乗用車装置 |
チャイルドシート。乗用車基準
(平成24年7月1日~乗車定員10人未満、後席が有る場合は2個または1個必要) |
タイヤ |
タイヤの性能(ロードインデックス) |
空気圧監視装置 |
平成30年2月1日~乗車定員10人未満の乗用車および車両総重量3.5トン以下の貨物車には必要。
(被牽引自動車を除く) |
ホイール |
アルミホイール装着車の場合、乗車定員10人以下の乗用車は「JWL」、乗車定員11人以上の乗用車は「JWL-T」
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乗用自動車
10人以下 |
乗用自動車
11人以上 |
貨物自動車
GVW*7 3.5t以下
かつ最大積載量
500kg以下 |
貨物自動車
GVW*7 3.5t超
または最大積載量
500kg超 |
JWL |
〇 |
× |
〇 |
× |
JWL-T |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
SAE |
〇 |
×*8 |
〇 |
×*8 |
メーカー表記 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 | |
原動機 |
ディーゼルエンジンの場合、乗用車基準 | ※上記は平成29年7月に作成したものです。
※上記の日付は製作年月日。 *1:スライドする場合は中間の位置とする。 *2:座席最側端とは、座席の中央部の前縁から奥行方向に200mm離れた位置において、奥行方向と直角に測定した座席の両端縁の端部とする。 *3:「横滑り防止装置(作動停止)の操作装置」および「横滑り防止装置(作動停止)のテルテール」の識別表示が適用されない。(7-12-19従前規程の適用⑤) *4:「ABS」走行中の自動車の制動に著しい支障を及ぼす車輪の回転運動の停止を有効に防止することができる装置。 *5:「VSC」走行中の自動車の旋回に著しい支障を及ぼす横滑りを有効に防止することができる装置。 *6:「BAS」緊急制動時に自動的に制動装置の制動力を増加させる装置。 *7:GVW:車両総重量 *8:GVW4.5t以下であれば「〇」
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